忘れ物をしたよ 昨日に
それを明日 探しに行くよ
| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK |
| CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
1.手の上には尊敬のキスを
私は貴方の手が大好きだった。
実を言うと、貴方の事を愛したきっかけはその手だ。私に魔法をかけたその手。あの夕焼けの空気を静かな舞踏会に変えた貴方の手。きっと幼い貴方は気づいていなかっただろうし、今も真の意味を知らずにいるだろう。同じくまだ幼い私は、それでも、その手に恋をした。

最初が左手なのか右手なのかは覚えていないし、知らない。探そうと思えば見つけられるだろうけれど、それをあえてしないのは、あれは私と貴方の夕暮れで、決して誰かに邪魔されたくないからだ。私はそうなる事を望んであの時間までいたわけでは決してないが、結果論的な事を言うと、時計の針が進むたびに私は貴方の魔法にかかるまでの人生を削って、かかってからの人生を待ちかまえていたことになる。そこから新たに動き始めた秒針は今何周しているのだろう。きっと最早未知数だ。

あの後貴方はどうなったのだろう。でもあの笑顔、横顔は、私の定かではない記憶にひとつの答えを生む。どうか今からでも素直な祝福を。貴方の事を愛し始めたあの日にどうか祝福を。痛んだ左足を引きずりながら、絡み合う時針と分針を睨み付けていたあの日の私は貴方の魔法にかかる事をどこかで予期していたのだろうか。一人で抱え込んでいたカウントダウンは決して短い時間では無かった。友は去り、貴方は戦いに旅立ち、勝手に孤独に立ち向かう私は何を思っていたのだろう。今もあまり変わっていない私はそれでも、幼かったから故の直向きさで貴方に好意を抱いていた。すべてを壊し産んだ、一つの半音まで。

今でも同じ悩みでバランスをとろうとしているのだろうか。私に多大な夢を見させた貴方の冷たい手。私の愛した貴方の魔法の両手へ、尊敬のキスを。
小説 comments(0) trackbacks(0)
スポンサーサイト
- - -
Comment








Trackback
この記事のトラックバックURL: http://rhap-sody.jugem.jp/trackback/602
<< NEW | TOP | OLD>>