忘れ物をしたよ 昨日に
それを明日 探しに行くよ
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完全に意味はない身体会議
倒錯的に生きたい。
わけがわからない発言だったので聞き流す事にした。僕の中の総会議では禄な発言が聞けない。多分感傷的になってる左手の親指あたりが図に乗って言ってみた事だろう。左手の親指が感傷的ってどういう状態なんだ一体。きっと僕がまだ幼い頃におしゃぶりを辞めたあたりでガラスの心に致命的なヒビでも入ったんだろう。

もっとクールになろうよ!
相変わらず実りの無さそうな提案は、随分伸びてきた髪の先っちょからだ。思うに足の爪の次ぐらいに僕の集合体から脱退するだろう毛先にクールもホットも指図されたくないとは思う。例えば俺を染めるとか巻いてみるとかだな!黙れ死んだ細胞め、僕は僕の思う温度感でやっていくってば。

探し人を探しにいきませんか。
右目の発言。僕は探し人なんていないんだけど。きっと目っていうのは、自分の相方と一生出会えない存在なんだろう。大体平行移動なんてしようがないし(というかされたら怖いし)、鏡などを通じて映像として出会うしかないよな。しかもそれって仕事中だ。この発言は採用しないけど同情だけしておこう。

根性見せろ若造!
なんだか胃がぐるりと嫌な音を立てる。お前か。こいつは何かとめんどくさい。繊細にきりきりと痛むくせに時に大胆にいい音を響かせてくる。せめてどっちかにしてくれ。というか若造ってなんだ、僕が肉体の総司令官なんだから僕より年寄りの内臓が内蔵されてるわけないだろ。ギャグではない、断じて。

この会議意味ある?
これは僕、というか、この肉体の脳みその発言だ。どう考えてもこれ以上発言に有用性が見いだせそうにない。こいつらからそんなの見いだせたら僕はもっと評価されるべきだと思う。生憎だけど、僕はそこまで出来はよくないから、とてもじゃないけど処理しきれない。早く会議終わればいいのに・・・

でも皆さんに会えて嬉しいです。
・・・・心の発言だ。こいつはどこにいるのかよくわからない。統計上は僕の所か、心臓の所らしいけど、前に心臓に聞いても知らないって言ってた。お互い忙しいから、おとなしい心がいても気付かないだけかもしれない。噂では、こいつが癇癪起こすのが一番厄介やしいんだが。気になるが出来ればお目にかかりたくない。
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本当は現つのメタファー
笑む人形を
安楽椅子に安置する。
戯れる天使を追いやって、
手に触れる。
血が通わないかと思うほど
冷たくあった。

揺れる薄茶の先には、
天使が妖精が、
そして悪魔がいた。
魔法を解いた六文字は、
どうやら明るいものには通じないらしい。

天使の戯れにくたばる人形は、
妖精に笑われて
悪魔に人間にされた。
幼い天使様は何も気にせず
人形を人形にした。

お迎えの時間が来て、
一同解散する。
安楽椅子は動かれずそこにある。
誰も同じ命運を辿らない、
そんな昼間の集会。
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5つのお題で『どうして』
1.どうして目で追ってしまうんだろう

次にどこから現れるか分かってしまうようになった。廊下で待った方がいいのか、移動した方がいいのか、教科書片手に無駄に動くことさえ。ただその細い背中を一目見たいだけのために。三つ離れたクラスの列から困難なく見つけられるようになったと気付いたとき、何だか締め付けられるような痛みに駆られた。


2.どうして笑顔が見たいと思うんだろう

正直、ほっといても笑ってる。でもその「笑顔」は一括りにしてしまうには惜しいほど種類があるわけだ。苦しい笑顔、困った笑顔、爆笑中の笑顔。悲しそうな声でも表情は一応笑んでいるし、声にならないほど笑っている時は涙目な笑顔をしている。今のところの目標は全パターンコンプリート。


3.どうして意地悪してしまうんだろう

小学生男児みたいな自分を知っている。若干格闘技気味になっても慣れた反射速度を見ると、最早脊髄反射だなと無駄に関心してしまう。周りがしてくる悪戯に比べて奇跡のような糖度不足をほこる意地悪の仕合は、それでもある意味では二人の関係性があからさまに見える。だから今日も仕掛ける、にやりと痛みの伴うちょっとした意地悪。


4.どうしてあの場所へと向かうんだろう

何故だか思い出の場所は華のない場所ばかりだ。そこに二人いるだけで妙な甘さを感じてしまうほど絆されているこの脳みそ。うっかり遠回りをしてしまう自分に苦笑いをする日々を送る。そうここは、そしてそこは、・・・ああ言うのがもったいない、質素故のとろみが心に想いを留める。


5.どうして好きなんだろう

本当は馬鹿みたいに羅列出来る、好きなところなんて。猫っ毛、目尻、細い肢体、冷たく湿った指、可愛くない言い草、奇妙な優しさと思いやり。でも言えど言えど信じないだろうから、苦みたっぷりの言い方しかしてやらない。見た目好きだと言った数時間後に性格誉めたら結局一緒だと思うのだけど。つまりは全部だ。



お題:どうして05/Everyday!!
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闇の裏の光へ
「だって神様はきっとお許しにならないわ」
「リサ・・」
遠く濡れた瞳をキッとこちらに向けて、リサじゃないライザよ!、と喚く少女はそれでも微か、足が震えていた。
「君は自分で決めたんだろう、違うか」
「・・私は、私の意志で決めたわ」

「だから怖いんじゃない、ばか」

軽量化を図って小さくまとめた彼女の荷物の中身を僕は知らない。幼い頃祖母に貰ったぬいぐるみもずっと読んでいた本だって、きっと入ってはいない。そんなものを持って逃亡するのは不可能を語るだけだ。ただでさえこの旅は不可能に限りなく近い。不必要なものは全て捨ててきた、僕もリサも。
男のように華のない服装をした、胸の上をぎゅっと抑えるリサ。想像でしかない、だけどきっとそこにはいつもの十字架が掛かっている。僕の胸にも同じように。

「ねえフィル、ひとつだけ教えて」

声は僕に向かうのにそれ以外の全てが僕と違うベクトルを向く。私は何をしているの、小さく呟いた声は許しを請うような空しさに消えた。夕陽が落ちるまでには丘を越えなくてはきっと父母に連れ戻されてしまう。まさに今歩き出すしかないのに、僕もリサもそうすることができない。
姉のような妹のような、そしてある意味弟みたいでもあるリサを僕が連れだしたのか、それともリサが僕を連れだしたのかはもう曖昧な記憶だ。ただとても幼い時に交わした約束をお互いが忘れられずに、そして再会の時によみがえっただけなのだ。運命から逃れることが出来ないのなら僕は彼女の手を引いて走るしかない。

「リサ、きっと何を言っても君は納得しないよ」
「・・・フィル」

「・・・・"Lisa"、『神の誓い』、そう君の父親は名付けたんだ」
「・・・・」
「大丈夫だよ、確信はどこにもないけど、きっと神様はお守りになって下さる」

ぐ、と小さく柔な手を握りこみ、街から離れるように歩いていく。リサは慌てて歩調を合わせる。

「"Phillip"、『愛に満ちた者』・・・」
「知ってるんだね」
「・・・実はね」

そう言ってリサは指を解いてそこに跪き、続ける。

「どうかこの者に神のご加護を」

僕はまねるようにして跪き、言う。

「どうか彼女に神の偉大なる愛を」

思わずお互い吹き出しながら、また手を繋いで歩き出した。いや、走り出したのかもしれない。夕陽が沈むまでそう時間は無かった。僕たちは始まったばかりの旅路を急いだ。
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バベルの塔
そう人間とは
いつも夢見がちで壮大
神様の歌を
聞きたいと願います
救われた者よそして産まれた者
同じく生き同じく死に

私たちの天なる独裁者は
それをいつも見守って
栄えて滅びて繰り返すのを
知っていたのか眺めている

ある日小さな人間は
大きな空を仰ぎます
その果ての物を
見たいと願う

そして総ては始まった
自分の幾倍もある塔を
それは天へ突き刺すように
それは神へ届くように

言わずもがな神様は
その成長に激怒した
人間のくせに生意気な
お前達に混乱を

人間たちは戸惑った
話せど話せど話せない
聞かない言葉が耳につき
いつもの言葉が通じない

そして塔は成長を
途中でやめることとなる
その塔の名はバベルの塔
人間たちの混乱の





そして年月過ぎ去って
時は西暦2008
ここにひとつの人間が
バベルの混乱に立ち向かう
そんな決意を抱いたのです
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夏祭り
薄黄色の浴衣を着て、下駄を履いて。人の熱気がぼんやりと私のテンションを上げる。
祭りだ。

「祭りだー!」

隣には、赤の浴衣から拳を突き上げて叫ぶ、花ちゃんがいた。きょろきょろとお店を見ながら、今にも飛んで行きそうな彼女の手を握って、金券を買わなきゃと告げると、そうだったと照れ笑い。相変わらず花ちゃんは元気というか自由というか。今度は金券売り場目指してずんずん進み出した彼女は、自分が浴衣を着ている事を忘れているんだろう。

花ちゃんの転校を知ったのは、一週間前のこと。
小学校最後の夏休みが始まろうとしていた。先生があゆみを抱えて教室に入ってきて、男子が「うげえ」と嘆く。私は成績を気にしながらも、頭の中は夏休みの計画が広がっていた。夏だもん。楽しまないと。
花ちゃんを見た。珍しく、静か。こういう時一番うるさいのは花ちゃんなのに。どうしたんだろと思っていたら先生が口を開いた。

静かに。今からあゆみ返すけど、その前に。松永さん、出ておいで。

そう言うと、花ちゃんはすっと前に立ってこっちを向いた。ぼんやりとどこかを見ていた。
そこからはよく覚えていない。とりあえずわかったのは、花ちゃんが引っ越すということ。今日がみんなとの最後の日だということ。花ちゃんとの最後の夏が始まったということ。私は黒板を見やった。大掃除のあとのそれは、いつになく綺麗だった。

金券を買った私と花ちゃんは、出店をちらちら見ながら歩き回っている。スーパーボール掬いに目をつけた花ちゃんがこっちをちらっと見た。する?しよ。私たちはこうだ。花ちゃんが引っ張る。たまに先生に心配されるけれど、私は全く苦にしていない。寧ろ、好きだ。

花ちゃんは4年生の時に、大阪から転校してきた。持ち前の明るさですぐに友達をたくさん作っていた。人見知りな私は、同じ教室の後ろの方でその様子を眺めていた。
5年生も同じクラスになった。隣の席に、松永花恵はいた。遊ぼ?声をかけられて、一週間後には友達も一緒に、鬼ごっこをしていた。私を外の世界に連れだしたのは花ちゃんだった。

スーパーボールを二つ握りしめて、花ちゃんは唐揚げ屋さんを覗いている。花ちゃんはあまり結果を気にしない子だから、何個でも、スーパーボール掬いをした事自体が満足なんだろう。唐揚げ食べようよー。予想通りの言葉だ。唐揚げは私も好き。にこやかに、うん、と言う。
陽は落ちていた。人が多い。すれちがう中学生はやっぱり大人に見える。不思議だ。中学生と小学生って何が違うんだろう。よくわからないけど、すごく違う。
私は公立の中学校に行くから、生きていれば中学生になる。生きていたら普通に中学生になって、普通に部活とかしたりして、普通に友達と遊ぶ。普通に。

唐揚げを頬張る顔は幸せそうで、いじわるしたくなった。ほっぺを突くと、うぐっという顔をする。何すんのよー!そういう顔は怒ってなんかいない。じゃれあうように、突いて、仕返しもされて、笑った。

花ちゃんは、関西に住んでいたのに、関西弁をしゃべらない。からかわれたのか、それとも慣れたのか。花ちゃんはなじみやすい。
ただたまに、すごく悲しかったり、すごく怒ったり、すごく笑ったり、そんなときに、関西の言葉になる。お笑い芸人が言ってる言葉を言う。私はそんな言葉を生で聞いたのは初めてで、面白かった。花ちゃんには言わなかったけど。

私たちは相変わらずうろうろしていた。フランクフルトの前で私が止まると、おっ?という顔で花ちゃんも2歩先で止まる。食べたいなと思うけどなんとなく言葉が出てこない。それを見て花ちゃんは、食べようよー、と、自分の主張みたいに言ってくれる。
トレーを手におそるおそる食べる私とは対照的に、食らいつく花ちゃんは見ていて気持ちがいい。そんな事を思っていると。

「・・・あっ」
「どうし・・あー!ケチャップ!」
「花ちゃ・・・、ちょっとこっち来て」

べったりとケチャップが花ちゃんの浴衣に付く。わめく花ちゃんの手を引いて、人混みを抜ける。ちょっと離れたベンチに座らせて、巾着からティッシュを引っ張り出す。花ちゃんは首から小銭入れをぶら下げていて、鞄は持っていない。花ちゃんらしいというか、なんというか。
一通り拭いて、隣に座った。暗がりだし、それに浴衣は元々赤色だ。良かった。お母さんには見つかるだろうけど、今周りの人にわかるほどではない。

「・・・ごめんね、花ちゃん」
「え?何が」
「あたしがフランクフルト食べたいって言ったから」
「言ったのあたしだけどね。なお止まっただけ」
「うん・・・」
「休憩!あたし下駄苦手だよー」

花ちゃんが足をぶらーん、とさせる。彼女流の慰め。私も足をぶらーんとさせた。下駄痛いー、脱いじゃえ、それはだめ、ちぇっ。子供みたいな会話だ。子供だからできる会話なのかもしれない。
騒いでいたら、大きな音。花火だ。どおん、どおん、ぱらぱら。赤に、黄に、緑に、空が染まる。今年最初の花火大会だ。しゃべるのをやめて、空を見る。夏だ、と思う。綺麗。花火は大好きだ。

「きれいだねー」
「ほんとね」
「花火好きだなあ」
「・・ねえ、なお」

花ちゃんの声のトーンが変わった。左を向くと、まだ花火の方を見ている。

「あたし、なおとお祭り来るの、はじめてなんだ」
「うん、あたしも花ちゃんと来るのはじめてだよ」
「ていうか、あたしここでお祭り来たの、はじめて」

毎年同じ時期にあるこのお祭り。私は小さいときから何回も来ているけど、4年生の時に来た花ちゃんにとってはまだ、3回目の夏なんだ。

「なおが、誘ってくれたじゃん」
「そうだね」
「珍しいよねー、なおが自分から誘うなんて。あたし嬉しくてさ、家でずっと言ってた」
「うん」
「だから今日は、すっごい楽しい」

花火は隣の瞳を輝かせていた。きらきら。花ちゃんはにっこりと、花火を見続けている。

「あたしも楽しい」
「うん。よかった。ほんとに、楽しい」

「あたし、もうすぐ引っ越すじゃんか」
「・・うん」
「・・・・けどさ、友達だよね」
「え?」
「離れても、友達だよね」

花火から目をやっと離して、こっちを見た。まっすぐだけど、揺れている、その目は不安そうだ。私はうなずいた。花ちゃんはまた花火を見る。

「転校って悲しいんだ」
「・・・・・・」
「普通に一緒に中学生になって、高校生になって、おばちゃんになると思ってた」
「そんな先まで想像できないけどねー」
「ねー」

「あたしは、ずっと友達だよ」
「・・・なお」
「金券買うの忘れてもタオルも持って無くても、花ちゃんの事はずっと大好きだよ」
「・・・・・・・」
「ずっと」
「うん」

言いながら私はタオルを出して花ちゃんに渡した。声が震えていた、私も花ちゃんも。

「また、一緒に花火見ようね」
「そうやね」

静かになった空を見て、私たちは笑った。手を繋いで駆けだしていく。
夏は、始まったばかりだ。
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更なる真闇への誘い
私はヘドロにまみれている。
これは主観であって客観ではない、あくまでも。ただ泥沼のような混沌や矛盾は私の内部から何かを吹き出させる。それに愛おしい者たちを触れさせてはならないと思っているが、触れたから何だという事もないのではないかとも思う。ただ現実と夢想と幻覚が錯綜している。昔木曜日が嫌いだったのとほとんど同じ理由で金曜日が嫌いだ。人間は成長するものなのだと言うが、ならば私は人間じゃないのだろう。成長どころか退化している気さえする。

この曲が聴きたくて行くというのも間違った話だと思う。人生なんて賭の連続だ。家にいても外に出ても何をしていても、いつだって死に神は真横でその偉大なる鎌を携えているわけだし、そしてそこの意義を見いだすのは結局何の根拠でもなくただ自分の期待だけだ。自分がそれを望んでいるから、そうなると思って、その益を心得て、飛び出していくのだ。私は益が当たった時よりも損を見極めた時の方が嬉しくなる。それもまたきわめて間違った話ではあるのだが。自分が本来なら得られたはずの利益をきっと失うのだろう、それならば、と何もせずに何も失わずに(実際は目をそらしているだけでかなりの損失を被ってはいるのだが)、無意味に一日を過ごす方が幸せだ。

ああ時代の秩序に飲まれている。
仇もなく生きる事など可能なのか。死を感じずに生きる事など楽しいのか。愛した人を悲しませる罪、忌み嫌う人を抱きしめる矛盾、そして無感情に感情の仮面を着せることも、何もかもがこの世の不条理だ。生まれながらに身につけた工作技能。それが私をいつまでも苛ます。大きな疑問なのだ。だがしかしきっと、誰しもが、優劣はあれどもこの技能を備えて子宮から飛び出してきたに違いない。そうだ、そこで最初の賭は始まっていたのだ。この人生の損得勘定を産道で怠った人間はきっと生きながらにして後悔をする羽目になっている。死を背中越しに感じてしかし生きるしかない人生、それは無情だろうがそれとも願いし結果なのか、その事自体は今は問わない。

人間が空を飛べたなら、一つの方法は道を殺がれる。嗚呼苦しいのだ。翼をもがれた天使は泣くことすら覚えない。私は元より天使でないから泣くことしか出来ない。私の幼い生意気な天使たちは今何をしているのだろう。少なくとも一人は容易に想像ができるのだけれど。彼らから翼をもぐのは私なんだろうか。私にそんな権限はそれだけの権威は、あるのだろうか。地上につなぎ止めるために私だったらしかねない、そう思ってしまうのはやはり客観ではない主観なんだろうか。それとも願望なのか。彼らに出会ったことも、彼らが出会ってしまったことも、生まれた瞬間に始まった大いなる賭博だ。手持ちのチップが消えるまで勝負は続くのか。それならばいっそ、もう全て賭けてしまいたい。得るなら全てを、失うのであれども全てを。もうそこに後悔も躊躇いもほしくはない。

ああ人の無欲なる事それは即ちきっと人に生まれ損ねた事だろう
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ラストJK(っていう主旨のお話)
あーほんまあかんわあ。小説のようにそんな上手いこといくわけないでなあ?と、飛鳥が言う。一体こいつがどんな小説をさして今の言葉を言ったのかは深く追求しない事にした。飛鳥はべらべらと、主人公がいかに思い人を落として云々、語り尽くしてきた。頼むからそれは家に居るときにメールで話してくれ、ミスドで学校帰りに堂々とする話ではないと思う。どんな話かは知らないことにしているが。

「まあともかく、飛鳥はあいつの事好きなんやろ?普通にいけばええやん」
「あんたはわかってへん!もーこれやから未友はあてにならんねん・・」

がん、と、空になったグラスを机にたたきつけた。飛鳥さん、店員の目が痛いんでやめてください。そんな事はつゆ知らず、本人はぼーっとした目で私の向こうのどこかを見ながら(少し怖い)、そんなんしてどうなるかわからんのに、失いたくないやんそんなん、と、聞こえるか聞こえないかのぎりぎりの声でぶつぶつ喋った。私はあえてそれに何も言わず、少し考える。

飛鳥の好きになった人は、飛鳥の大親友だった。別に彼氏やら彼女やらにならなくても一生一緒にいる事も出来そうなものだと私は思う。だから飛鳥だって今までそんな事は何も言わずに、告白してきた男子とつきあったり格好いいと評判の他校の子を探しに行ったりしていたみたいだ。私はそういう事に疎いから、遠巻きに見ていただけだけれど。そんな飛鳥を血迷わせたのは受験という一種人生の大きな山場なんだと思う。来年の春になれば別々の道を歩むに違いない私たち。それはもちろん、飛鳥と彼も一緒だった。飛鳥の好きな人は学年でも有名なほどの頭脳を持った人だ。私だって同じクラスになった事はなくても噂はテストの度に聞く。この間の中間はトップだったか、それとも二位だったっけ。それに対して飛鳥は・・・まあ、言ったら悪いけれど、お世辞にも頭がいいとは言いにくい。致命的に悪いわけではないけれど、決して彼と同じ大学に行くようなレベルではないだろう。そんな焦りが飛鳥を追い立てて居るんだ。
私が友達としての贔屓目を放り出しても、飛鳥は可愛い方だと思う。そんなに高くない背と、華奢な体つき。目もくりくりしているし、声だって高くて愛らしいのだ。こんな事ばかり言うと私がどんな目で飛鳥を見てるのか訝しがられるかもしれないので弁明しておくが、私に決してそういう趣味はない。まあとにかく、だから私は飛鳥が普通に告白していけば良いんじゃないのかと思うわけだ。というか、何がいけないのかわからない。

そんな事を考えていたら、ぼうっとしていた飛鳥が正気を取り戻していたらしく、綺麗に描いた眉を少しゆがめながら私を眺めていた。

「ほんまに、ほんまにほんまに、うち、あいつの事、はめようとしてる気してきた」

飛鳥、もしかしてさっき言ってた小説からまだ頭離れてない?主人公は自分から告白するよりかは相手に告白させた方が確かだとして落として云々、途中からはあまり聞いてなかったからよくわからないが。確かに、飛鳥の好きな人は、昔からの大親友である分、飛鳥には甘いんだけれど、小説のようにいくのは小説の中だけやからなあと飛鳥自身もつぶやくぐらいだ。それより、今はそんな若干物騒な事を言いながらも悲しい顔をしている飛鳥の相手の方が優先だ。

「べ、別にはめるなんて言い方せんでも、ようするに好きになってもらいたいんやろ?それでええやん、よくある事やん」

そう慌てて取り繕うと、飛鳥は大きな目でぎっと睨んできて、私はうっ、となる。この子顔整ってるから睨まれるとすごく怖い。だからさっき言うたやろ、あの話ではな、と、もうだんだん赤裸々に小説の内容を語り出した飛鳥を止めるすべもなくただ聞き流す。本当にこの子は一体どんな小説を読んでいるんだ。言及する負担を考えるとなにも言いたくないんだけれども。

ふいに喋るのをやめて、飛鳥はぱっと私を見た。なんだなんだ、と、私は意識を復帰させる。ただいま地球、というくらいのもんだ。

「未友にはさ、そうやって無くしたくない人おらんの?」

にやりと口角を上げて、聞いてきた。こいつうううう、私に話のターゲット変えやがったあああ。ちょっとこうなることを最初から恐れていたから、こいつと二人でミスドくるの嫌だったんだ。ああああ、あほな私。おらんから、と小さく返した私に、テーブル越しに、ほんまあ?とやはりにやにやして聞いてきた。

「未友、隠しててもええねんけど、おって後悔してもしらんでえ?」

そっくりそのまま返しますと言いたくなる口を理性が必死で塞いで、戸惑った目線だけを返してみた。飛鳥あんた、そんな事いう元気あるんだったらそのまま彼のところ行って来いよ。やはり言わない。このテンションになってしまった飛鳥の対処法を、私は5年かけて覚えたんだ。放置。変に絡んでも怒られるか拗ねられるか拍車をかけるのかのいずれかだ。そのまま楽しそうにしゃべり出した飛鳥を見て、こいつ何だかんだ言うても幸せそうやな、と少し安心した自分に驚く。私はこいつの保護者か、とセルフ突っ込み。むなしい。

喋れるだけ喋って満足したらしい玉切れのマシンガンは、ふう、と息をつくと、あ、そろそろバスだわとトレーを持って席から立った。私も鞄を持って立ち上がった。本当、そろそろいいお時間だわ、とマダム口調で心の中で言う。2時間半くらい居座っていただろう。その何割くらい私喋っただろう。うん、むなしい。まあ良いんだけど。

バス停で飛鳥と別れるとき、アーモンド型の大きな目をこっちにしっかり向けて飛鳥がいう。

「未友、お互い後悔せんとこな!」

あまりにきらきらした親友に眩暈がするような気もしつつ、適当に笑ってばいばいと言った。頑張れ、飛鳥。
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皐月中日と少し、そして水無月の夜
さあ、それは実に先日の事だった。
僕はついに彼女から旅立つ必要があるのだ。そしてそれは何年も前から始まっていた拙い物語だったのだが、しかしそうは言われても僕はあの夕陽を孕んだ眼を忘れられないのだ。
きっとそれはかつて恋を呼ばれたもので、いつか憎しみでいつか愛だったのだ。そしてそれはいつであっても彼女の存在自体であり、転じては僕の存在自体でもあった。その日に僕は生きようと思い死のうとも思った。例えば365回の朝があれば、366回目には少なくともその日は訪れる。彼女は僕の天使で姫君で、僕を再起不可能にする悪夢でもあった。しかしれどそれは、疑いようもなく僕を存在せしめる大きな力だったのだ。そしてその夢は覚めることを知っているのか。明けない夜に身を震い泣く彼女を抱きしめたいと思っていたのはいつのことだったろうか。

僕は彼女のいない世界を生きたことが、たったの一秒も無い。彼女は僕の知らない世界を安らかな呼吸のもとで泳いできたというのに。そしてそこに僕が飛び込んでいった。例えそこに彼女の存在を見受ける事など無かったとしても、僕の飛び込んでいった世界に彼女はいたのだ。そして潮は月日が導くようにし、僕たちの運命線は重なった。彼女の線が真っ直ぐで僕のが歪んでいたのか、逆なのか、それともどちらも歪んでいたのか、それは神様にしかわからないだろう。ともかく、僕たちの運命線は重なったのだ。近づき離れて、それでも重なっていた。濃くなることも薄くなることもせず、単と重なっていた。

そして、これはまた別の物語へのブリッジとなるのだが、その日は始まりかつ終わりであると同時に、また別のその日へのカウントダウンを始める日でもあった。また別の次元に生きる一人の人間をあらしめた、そうだ、神様はいつだって残酷で、一つ重ねてはまた新たになぞってゆくのだ。

そしてその新たな運命線の話は、まだ先の事であろう。
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Genie in a bottle
何とも不思議な域での会話を試みているね。面白い。

これは全て、「彼」という仮定法における話であることを大前提とする。

もし、もしも、私が彼と何らかの共有を持ったとしたら、それは接点であり、きっと垂直に私達の半径は繋がる。真っ直ぐに真っ直ぐに、お互いを貫いて、しかしそれはあくまでも私達の中にしか留まらない。外に出てゆく触れ行く線は90度方向変えて、決して私達に明日を訪れさせはしないだろう。
致命的な間違いをしているよ、少女よ。それを正すことすら私には赦されていないけれど、君は致命的な間違いを犯している。私と彼は同じ紙の上にいるからこそ、一生を掛けても交わることはない。せめて表裏、違うところにいたならば、光に賺せば可能性はあったかもしれないのに。それは赦されない。彼は綺麗な円を描いて存在し、私もまた然りだ。私の思考はメビウスの輪のように、追っても追っても、たどり着きたい所へたどり着けはしない。

私は瓶に囚われている。確かに戒めは道を封じ、慢心は静かなる(ある意味静かでもないか)孤立への道を開く。さてしかしそこで、私にどうする事が出来よう?私の瓶を誰かがの人差し指が柔く擦って、私は彼に(もっと内的な意味を込めて)会う事が出来るのか?彼が何らかの代価を払って私を解放しようとするのであれば、それは封じなくてはならない事で、私は自らの意志を以て瓶を割ろう。一見小さいかもしれない代価は、それでも人生を伴ってくるものかもしれない。ガラスを踏んで得た血みどろの傷よりも大きな何かを刻む権利は、決して私には無いんだよ。

Just come and set me free baby,
and I'll be with you

どの立場からでも話は出来たろう。あえて、あえて、決して望むことはない歌を歌おう。
しかしながら、アイロニーを説くわけでは無いが、決して擦らないように。
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